8階に停まったバス

2018-12-29 13:41:21

朱輝=文 砂威=イラスト

 

                             

 

 2002年の初雪は、例年よりも少し遅かった。8階に停まった2番のバスは、最後の黃色い落ち葉を一緒に運んでいった……」。気だるい午後の事務室に刀郎の歌聲が流れ、それは李さんのパソコンからのものだった。

 「ずっと不思議だったんだけど、どうしてバスが8階に停まるんだ? どうやって下に降りて來るんだろう」。馬さんが突然こんな興味深い疑問を投げ掛けてきた。

 「そうよ、私も分かんなかった。バスを8階に上げるなんて、どれだけ大きなクレーンよ」。劉さんも面白そうに口を挾んだ。

 こうして、8階のバスの問題が事務室で熱く討論されることになった。討論している最中に、外から1人の人物が入って來た。みんな見るなり驚き、しばらくどうしたら良いのか分からない様子だった。特にしゃべっている最中だった馬さんは、表情とともに大きく空中で振り回していた手を、どう始末したらいいのかと気まずそうにしていた。

 「どうせ50過ぎの人間だからとは思わないでくれよ。私だってよく流行曲は聞くんだ」。事務室の雰囲気をほぐしたのはやはり賈局長で、どうやら今日は機嫌が良いようで、みんなが勤務時間中におしゃべりしているのをとがめなかったので、事務室は再び盛り上がった。

 「バスが8階に停まるのは可能だよ。私の故郷の重慶は山につくられた街だから、山の麓の8階は山の中腹の道路と同じ高さだし、ウルムチにもこうした山があるんだろう。頭を使えば、どんな難題にも答えは見つかるものさ。君たちも仕事中に8階のバスについて考える好奇心があるなら、そうやって積極的に考えれば、良い仕事ができるようになるんじゃないのかな」。賈局長の機嫌は確かに良いようで、とうとうと止むことなく語った。

 「局長はやっぱりわれわれとはレベルが違う。われわれはあれこれ議論しても、頭を働かせていなかった」と、まず馬さんが極めて神妙に感嘆した。

 「ほんと、ほんと。われわれにはどうしてそんないい頭がないんだろう」

 「人によって違うもんですね」

 事務室の雰囲気はピークに達した。

 「8階はウルムチの地名で、そこには崑崙ホテルという8階建ての建物があり、そこは以前ウルムチで最も高い建物で、そのためにそこは『8階』と呼ばれていたそうです」。突然、隅の方から新入りで大卒の張くんの聲が響いた。彼は検索エンジン「百度」でこの情報を今探し當てたらしい。

 事務室はすぐさま気まずい雰囲気に陥った。幸いなことに、たちまちみんながそれに反応し、ネットの情報は當てにならないだの、今の若者はネットを盲信するだの、獨立思考に欠けるだの口々に言い始めた。

 1カ月後、張くんは図書室に配置替えとなり、とうとう資料探し好きという彼の長所を発揮できるようになった。しかし、聞くところによると、図書室は下半期に局がリストラの標的としている部門ということである。

 

 

翻訳にあたって

 刀郎は1971年四川省生まれの人気歌手?作詞作曲家。早くから音楽活動を始め、成都?重慶?チベット?西安?海南などの地を転々としたが、95年に新疆に行った際、現地の音楽に心打たれて新疆移住を決意し、その後新疆を根拠地として音楽活動を展開、2004年に本文中にも登場する『2002年的第一場雪(2002年の初雪)』で全國的にブレイクし、その後も次々とヒット曲を放っている。

 中國語の「樓」は2階建て以上の建物のことを指すが、場合によっては 「層」と同じように階數を指すこともある。2樓といえば2階を指し、2號樓といえば、2號棟となるので注意が必要。(福井ゆり子)

 

 

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